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教科書改訂から考える教育環境の変化

先日、区役所に小学校の教科書を閲覧に行きました。その理由は来年度の教科書改訂です。皆さん、2019年度に発表されたGIGAスクール構想はご存じですか。この構想に従って2020年には、ほぼ全ての子供達にコンピュータ端末が行き渡り、学校のWi-Fi環境も整えられました。

そして来年、デジタル教科書の導入がスタートします。上の写真の新しい算数の教科書では、多くのページにQRコードがついており、これを読み込むと教科書の内容を説明してくれたり、問題や解答が表示されたりします。国語では読むのが苦手な生徒のために朗読してくれたり、作者のインタビュー動画などもあります。21世紀って感じですね。

でも、塾教材ではもっとすごいことになっています。

塾ではテキストに準拠して動画が解説してくれるシステムが普通に導入されています。テキストへの線の引き方から問題の解法まで至れり尽くせりです。カイチでも一部このシステムを導入していますが、残念ながら生徒達は動画を見ずにテキストの文章を自分で読み、分からない所は先生に質問します。「なんで動画見ないの?」と聞くと生徒は「先生に聞いた方が早いやん!」なるほどその通り。下手な大人より子供達は合理的です。

このような教材の今の流行は・・やはりAIです。AIを使った教材は優れものでタブレットに表示される問題を解くとAIが生徒各自の弱点単元を分析してくれます。このシステムのすごさはそれだけではなく、その単元を構成する要素までを分析し、そこまで戻って学習させてくれます。更に、先生の端末にはタイムリーに「この子は詰まっている」「この子は解説を読まずに進んだ」なども表示され適切に声をかけられるようになっています。

実はカイチではこの教材の導入を検討していました。しかし、調べてみると、戻り学習をし過ぎてテスト対策に間に合わないケースが多い、(やはり経験ある先生の方が端的に弱点箇所に気づいて指導し、テスト箇所まで戻って指導できる)、また、生徒は端末の学習に飽きてしまい学習が続かないという問題点が出てきました。

少し話は変わりますが、カイチでは4年ぶりにイングリッシュキャンプを実施しました。この時気づいたのは、コロナ前に比べ子供達に、協調性がなくなったのではということでした。みんな「~は知ってる」とか「~も知らないの?」という言葉は多いのですが、いざやろうとなると行動が伴わない。最初は少し頭でっかちな印象を持ちました。

ただ、イングリッシュキャンプが終わる頃には、子供達の顔は全く変わっていました。キャンプでは布団のたたみ方、食器の返却の仕方まで細かく指示され、できるまでやり直しをさせられます。晩御飯は飯盒炊爨で自分達で作らなければ食べることもできません。理屈よりもやってみる。やってみる中で、仲間と知恵を出して乗り越えていく経験が子供達の心に何らかのスイッチを入れたのだと思います。

一見合理的で効率的に見えるICT教材に感じるつまらなさや、不便だらけのイングリッシュキャンプが子供達の表情を変える現状を考えた時、やはり人間は本能的にバーチャルよりも体験や触れ合いを求めている。また、むしろそのようなことが現代社会を生きる上では重要なのではないかという気がします。

2022年のイグノーベル賞経済学賞を受賞した「成功するには才能か運のどちらが必要か」をコンピュータシミュレーションを使って数学的に統計学的に解明した研究において、成功には「運」が必要という結果が出たそうです。

正確には「才能は平均より僅かに上で、運が良い人」が最も成功したということですが、決して努力が無駄ということにはならないようです。ポイントは巡ってくる幸運なイベントを活かせるかどうかだそうです。そのためには、「オープンマインドで他者と接する準備が出来ている人」でなければならないとこの実験の研究者は述べています。

オープンマインドを示す要素としては、開放性・協調性・勤勉性・外向性・情動性(心の安定性)が紹介されていましたが、成功において大切なのは、運を引き込む「人間性」ということになりそうです。

このように見ていくと、勉強そのものは、生きる上で必要な学力を身に付けるという意味で当然大切ですが、それに取り組むことで付随的に身に付く粘り強さや、継続する力などの目に見えない力が、皆さんの将来において重要なことが分かります。また、そのように考えると学校でのクラブ活動や遠足、修学旅行などの野外活動、運動会や文化祭なども、大切な力を育む機会であることが分かります。

バーチャルよりもリアルの世界でたくさん体験することで「楽しい」「うれしい」「かなしい」「くやしい」などの感情を思いっきり動かしてみる。その中に、社会を生きる大切な何かが潜んでいるような気がします。昔の人は「よく遊び、よく学べ」と言いましたが、学生生活の今を、思いっきり味わうことが、みなさんの「運」を引き込む力、生きる力を育てることに繋がるのではないかと思います。

  <塾長 高木秀章>

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