将来の年収を上げる教育とは?

新学年は初めての定期テストが終わりましたが、皆さんどうでしたか?カイチ全体では平均90点以上の開智賞が113人、過去1年間の最高得点の努力賞が184人、中学の塾生が全員で537人ですから、約40パーセントの生徒がどちらかに該当したことになります。全体としては、新学年を良い形でスタートが切れたと思います。
今回は「科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線」をご紹介します
今回のGROWINGでは久しぶりに本の紹介をします。教育経済学の研究者の中室真紀子さんの「科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線」です。
教育経済学とは、教育にかかるお金や時間、意思決定や成果を経済学の観点で分析する学問分野です。そして、この分析に使われるものはデータです。最近では、何十万、何百万人という単位の子供の成績、行動、進路などが含まれるビッグデータがあります。本書では、これらのデータを駆使して得られた科学的根拠(エビデンス)によって、子供の頃のある時点で受けた教育が、大人になってからの就職、収入、健康、そして幸福感などに与える影響と、教育や子育てへの有益な提案が書かれています。
今回はこの本から「将来の年収をあげる教育とは?」についてお伝えします。
将来の年収を上げる教育1 スポーツ
パデュー大学のジョン・バロン教授らの研究は、アメリカの高校で課外活動としてスポーツをしていた男子生徒は、スポーツをしていないかった同級生と比べて、高校を卒業して11~13年後の収入が4.2%~14.8%高いことを明らかにしています。そしてスポーツの良い影響は,女子の方が大きいという複数のエビデンスもあるそうです。
子供の頃のスポーツの経験が、大人になってからの収入を上げる理由については、①採用が有利になる、②忍耐力やリーダーシップが身に付くという2点が上げられています。
①採用が有利になるについては、スポーツ経験があるという履歴書は、面接に呼ばれる確率が2ポイント高くなり、建設業や介護職などの体力を求められる仕事では、その効果は2倍にもなるという研究結果がでています。
また、②忍耐力やリーダーシップが身に付くについては、同じ家庭で育った14万人のきょうだいを比較する研究が実施されています。分析の結果はきょうだいのうち、スポーツをしていた方の年収がスポーツをしていなかった方よりも約4%高いことが分かりました。そして、きょうだいのうちスポーツをしていた方は忍耐力、リーダーシップ、責任感、社会性などの「非認知能力」(学力テストやIQテストテストで計測できる「認知能力」に対して、それ以外の能力の呼び方)が高いことが分かったそうです。
そして、非認知能力こそが、その後の学力や中年期以降の年収に高い相関関係があることがわかっています。この非認知能力を伸ばすには、スポーツだけでなく音楽が有効だとするエビデンスもあります。高校卒業まで継続的に音楽活動をしていた生徒は、学校の成績が良いだけでなく、勤勉性が高く、外交的で、意欲的であることが分かっています。また、美術も有効で、美術館に行って絵画を鑑賞する経験をした生徒は、他社への寛容性が高く、批判的思考力に優れていることを示したエビデンスもあります。
確かに、大半がクラブと勉強を両立しているカイチ生が優秀なのも頷けます。
将来の年収を上げる教育その2 リーダーになること
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のピーター・クーン教授らが行った研究データによると、高校時代にリーダーシップを発揮した経験がある人は、そうした経験のない人に比べると、高校を卒業して11年後の収入が4~33%も高くなることが示されています。
リーダーになることで将来の採用や就職に有利になるデータや、学力や学歴が高まることを示すデータもあり、良いこと尽くしのようです。
ただ、ここで気になることがリーダーシップとは、生まれながらに備わった能力ではないのかという問題です。実はこれに対してもデータがあり、リーダーとしての経験を多く積んだ生徒の方が、リーダーシップスキルが高くなっていることが分かっています。つまり、リーダーシップは天賦の才能ではなく、経験を積むことで身に付くスキルであることが分かっています。「自分に自信がある」などの性格的な特徴とも相関はないそうです。また、経験することが重要ですので、集団登校の班長やボーイスカウトの班長など小さなグループのリーダーでも全く構わないそうです。
リーダーに立候補する要因としては、自分からではなく親や周りからの勧めが最も多いようですので、機会がある時には、「やってみなよ!」と是非背中を押してあげてください。
以上、「科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線」の一部をご紹介しましたが、いかがでしたか?将来の収入を決める要因となっているのが、スポーツやリーダーシップの経験。保護者の方にとっては、意外ながらも「なるほど!」と感じられた方も多いのではないかと思います。そして本書では、スポーツやリーダーシップ経験から身に付く、忍耐力や自制心、やり抜く力などの「非認知能力」こそが、将来の健康や結婚生活、仕事の成果などと相関する力であることを解き明かしていきます。
ご興味がおありの方は是非ご一読ください。<塾長 高木秀章>